てしごと はじめのいっぽ!

日々の暮らしに手仕事を。

「急がば回れ」~ 手仕事クラスに中学生が参加してくれました。

手仕事の集いを長らく開催してきましたが、社会の変化に伴い、参加者も変わってきました。特に今年は、子連れのお母さんの参加者がめっきり減りました。

ここ数年は、育休中のお母さんも多かったのですが、今や育休が1年未満というお母さんが4割近く。

当然、今の子どもたちは、早ければ1歳になる前から、保育園、つまり家族以外のどこかの組織に属するということ。おそろいの帽子をかぶった保育園の子どもたち「だけ」が遊んでいる公園も珍しくありません。

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子どもの社会デビューが早くなりました。

その代わりというわけではないのですが、学校に行っていない学齢期の子=不登校の子が、「社会」からちょっと抜けて、平日の手仕事クラスに参加するようになりました。

文科省のH29年度の調査によると、全国の小学校で約3.5万人、中学校は約11万人の不登校児がいるとのこと。H3年度の調査では小学生が約1.2万人、中学生が約5.5万人とのことですから、四半世紀の間に、小学生の不登校児は約3倍、中学生は2倍になっています。保健室登校の子を含めると、もっと多いでしょうね。

学校に行かない理由は、ここでは問いません。いろんな事情があるでしょう。

でもできれば、傷が癒えたら、人と関わることは、ちょっとがんばって続けてほしいな、と思います。人間と交流するのは、めんどくさいことです。でも同時に、人間は一人では生きていけない。気を抜くとどんどん交流しない方に流れていってしまうから、どこか行く場所があった方がいいと思います。

社会との関わりは、乳児期ではなくて、学齢期にこそ必要です。歯が生え変わったあとは、家族以外の共同体があった方がいい。

そんな時に、手仕事を選んで来てくれるのは本当にうれしい。「学校には行かない」と決めて、でも「どこかに出てみよう」と考えたときに、「手仕事」が候補に挙がるなんて! とてもありがたいし、「なかなかいいカンしてるね!」と思います(笑) 

手仕事のいいところは、集いながらも、話をしなくていいところ。沈黙も苦にならないし、話したければ話せばいい。そして、それに無理に反応しなくてもいい。

それぞれの呼吸を守りながら、緩やかに場を共有する……そんな在り方を許容してくれるのが手仕事です。

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おしゃべりな人同士が話をしていたかと思うと、みんな黙って静寂が訪れる。

家庭や集落に手仕事があった頃、今よりもゆったりと時間が流れていた頃は、こんな風景だったのかなと想像します。家族以外の大人や子供、老人……多様で複雑な関係性を自然に築けていた時代が、かつての日本にもありました。

さて、埼玉県から来た中学生の女の子と、おかあさん。「糸かけを作りたい」といらしてくださったのは、10月のはじめのこと。夏休み明けから、学校に行くのをやめたそうです。

お母さんが「糸かけ」の告知を見てお子さんに見せたら、やりたい!ということで、ラッシュが少しだけゆるくなった電車に乗って、横浜まで来てくださいました。

コンパスを使って型紙を書き、布を張って……

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周りでは手仕事おばさんたちが、いろんな話をしていましたが、それをBGMして(うるさいと思っていたかもしれませんが!)黙々と作り続けました。

そして2回目は、お母さんはお仕事があったので、一人で電車に乗ってやってきました。これも嬉しかったな。

そしてやはり、黙々と。

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Mちゃんの作品

最後に入れたミカン色が温かい。

あまりお話をしなかったけれど、制作の様子から、「きちんとしたい子」なのかな、と感じました。一本一本丁寧に、ちょっと曲がったらやり直して……。自分の時間と空間が、少なくとも今は、たっぷりと必要な感じがしました。

この「糸かけ」は、コツを掴むとパ、パ、パ……とできるのですが、調子に乗ると間違えて「アレ! おかしいな!」となって戻る、という方も多いものです。

Mちゃんは、じっくりと、慎重に数を数えて、結果、一度も戻ることなく作り上げました。決してペースは速くないけれど、戻らないので、結果として早く仕上がりました。「急がば回れ」ですね。

Mちゃんの学校がそうだというわけではなくて、これは一般論なのですが、「速い」ということが評価されるのが今の社会であり、学校の文化です。

あおり運転のような社会の中、「Mちゃんのペースが守られますように……」と思いました。「やる」と決めたことは完成させる力のある子ですから。

次は、クロスステッチに取り組んでいます。学校の家庭科で習って楽しかったから、とのこと。

クロスステッチは、バツ、バツ、バツ……とやるので、「ヤダ!」と言いたい気持ちが芽生える思春期の始まり頃にいいと、シュタイナーの手仕事の先生に聞いたことがあります。なるほど、ですよね。
また、マス目に添って刺していくスタイルがデジタル的なので、幾何学好きな彼女にちょうどいいかな、と思っています。

今、とても素敵な作品を制作中なので、仕上がったらまたこちらでご紹介しますね。

 

 

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