てしごと はじめのいっぽ!

日々の暮らしに手仕事を。

子育てのために必要なこと―――「正しい子育て」をぶっ飛ばせ

先日、小さな子を持つ若いお母さんたちにお話しする機会がありました。

今や、子育て産業は一大ビジネス。若い夫婦にはお金がなくても、ジジババのポケットをも狙っています。

結果、子育てや教育には、「こうしないと……」という脅しや、「ねばならない」の教義が満ち溢れています。正しいやり方、発達に即した、正しい順番。これが本物。これが最新。

善良なる発信者にはそのつもりはないでしょうし、むしろ良かれとやっているのでしょう。でも、受信者であるお母さんたちは、心が非常に繊細な状態なので、そのように受け取ります。

で、「それはいい」「やってみたい」と思っても、それを実践できない自分や、全うさせてくれない夫、実家との関係。そして目の前にある現実社会としてのご近所づきあい、幼稚園選びなどに、お母さんたちは悩んでいるようです。

「《ねばならない》からは解放され《ねばならない》」という理論にたどり着いた方もいます。そして「ねばならない」に陥っている自分すら責める。反動で、「自分の好き」「まずは自分」をむやみに追及し始め、現実逃避と紙一重の「自由」を求めて、子どもが置いてけぼりになる人も少なくありません。

それほど、産後のお母さんたちは敏感に、傷付きやすくなっています。

私もかつては、「自分ができなかったこと」「やってあげられなかったこと」が気にかかっていました。でも今は、体力気力の衰えから、なんとも思わなくなり……その代わり、ただでさえがんばってる若いお母さんたちの弱みに、そうやってつけ入るやり方を見ると、憤然たる思いです。 

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特に、日本の都会で子育てをしているお母さんたち。

本来の、生き物の子育てのためのサポートを得るのは難しい状況です。本当のサポート……それは、自然の産物である子どものための、自然ではないでしょうか。

 乳幼児の子育て期に本当に欲しいものは、きれいな空気、きれいな川、そして土、草。目や耳が休まる、文字や看板の無い風景と、鳥や虫の声しかしないような、音環境。

子育てをしながら、それに気付くでしょう。だけど、仕事、通勤などを考えると、今さらそんな場所には引っ越せない、という家庭がほとんどです。

自然からのサポートが得られず、「人間らしい成長」が難しい時代にあります。

そんな中で、子を産み、母親やってるだけでもエライです。心のままに、感性のままにでもせっかくだから、いろんなことを見聞きして考えて、柔軟に生きていってほしいと思います。

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経験を積むと、力は自然に抜けます。最高のおやつはネコマンマ。

一番身近な、どこにでもある自然……それは人間の体と感覚。

でも、心と言っても、本当の心と衝動がありますね。

おなかが空いていたから、疲れていたから、悲しかったから……そんな理由で、一時的な浅い衝動を本当の思いとカンチガイすることもありますし、小さいころ兄弟げんかで怒られて嫌だったことを思い出す、大嫌いだった先生、受験で苦労した、押し付けられた習い事……そんな過去の経験から、バイアスがかかってカンチガイが起きることもあります。

本当の心に繋がるためには、ちょっと一人になって、静かな時間と空間が必要ですね。呼吸法や瞑想、ヨガ、散歩やランニングがいいという方もいるでしょう。いろいろあるけれど、手の仕事もひとつ。

手仕事の小さな達成感や、手のひらが覚えている感覚が、人をたくましくし、本当の心に結び付けていくのです。

都会暮らしで自然が得にくいのであれば、自分の体の感覚を見つめ、育ててみるのはいかがでしょうか。最も身近にある、ナチュラルでオーガニックなものは、自分の肉体ですから。

物を作る手仕事でなくてもよいのです。

たとえば、食洗器を使わずに食器を洗ってみる。水の冷たさ、油が落ちる感触。

たとえば、無洗米を食べている方は、敢えて研ぐ米を買って、研いでみるのはどうでしょう。さっと濁る冷たい水、手のひらに当たるツブツブ。さらに鍋に入れてガスで炊いてみるのも発見があるでしょう。

パン焼き機に任せずに、手ごねしてみるのもいいですね! グルテンが引き出され、手のひらの中で変化していく感覚。

乾燥機を使わずに、洗濯物を干す。干しながら浴びる日の光、空気の温度、取り込むときの、「おひさまの匂い」。

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ちょっと意識的に感じてみてください。そういう些細な感覚体験が、自分を自分に還らせ、一生を支える力になっていきます。大人になっても、そうです。大人だからこそ、必要ですよね。

衝動に繋がっているときは、満ち足りることはありません。でも本心に繋がると、一瞬で、分かります。「ああ、これだ!」と。それの繰り返しです。

子育てのために必要なことは、特別なことは何もありません。専門教材も要りません。

子どもと一緒に手足を動かして、お母さん自身が、お母さんの感覚にしっかりつながること。

すべて、生活の中に揃っていた、用意されていたことに気付くでしょう。

ここから始まる、いつでも始まり。

もともと、子育ても教育も、気が遠くなるくらいずっと前から、私たちの暮らしの中にあったもの。ましてや手仕事なんて、その最たるものです。

だからただちょっと、意識を微調整して、探してみればよい。きっと思い出します。難しく考えないで、日常の中で、「わざわざ手足や体を使うチャンス」を探してみてください。

たとえば、ベビーカーで行ってた道を、何時間もかかる覚悟で、歩かせてみる。エスカレーターではなくて階段を、登らせてみる。公園で集めてきた棒を、やすりでこすって、オイルで磨いてみる。短く切って、おもちゃにしてみる。

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細いところを延々と歩く

今のあなたが、あなたの街で、あなたの家族とともに子どもを育てるときに、そのやり方は、あなた自身が作り上げるのが一番フィットするのです。

もし、思いつかなかったら、拙著「てしごと はじめのいっぽ」をヒントにしてみてください。ひとつふたつと作るうちに、勝手にご自身に合ったアイデアが湧いてきますよ。驚きや発見があったら、体験談を聞かせていただけたら嬉しいです。

ここから始まる、いつでも始まり。あなたのおうちが、始まりです。

手仕事は、お母さんたちを「ねばならない」のループから解放するためのひとつの解決策なのです。

 

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