てしごと はじめのいっぽ!

日々の暮らしに手仕事を。

手仕事は冒険だ。

子どものおもちゃを作る手仕事を、お母さんたちに伝える仕事をしています。

初心者、ぶきっちょさん歓迎のレシピで、子どもの頃の図工・家庭科のトラウマ解消も目的のひとつ。かく言う私自身が、もともとアート系の教科でひどい目に遭ってきたから……!

子どもが入園した幼稚園で手仕事を学び始めました。3人の子どもを通わせているうち、いつの間にかベテラン、お局、そして講師になってしまったのですが、元・不器用の私だからこそできることがある、という思いで活動しています。

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例えば「刺繍ボール」は、加賀の手毬のように、表面に刺繍が施された直径10センチ程度、ソフトボールくらいの大きさのボールです。手毬のような繊細なものではなく、毛糸に覆われた温かみのあるもの。子どもが投げても大丈夫なように、頑丈に作ります。

「わあ……」という感嘆のため息のあと、これを手にした人の感想は、2つに分かれます。

「作ってみたい!」か、「これは作れないわ」。

 でも、ルックスの割に、やってみると簡単なので、ステキだなと思ったら、ぜひ挑戦してほしい! 講師の推しアイテムです。

 手仕事のプロセスには、それぞれ固有の学びや気づきの素が隠されています。自分で物を作るということは、それらを発見する宝探し。

これは、すべての手仕事に言えることです。

 「感じて、選び取り、自分を信じて、行動する」の連続の中、無意識のうちに作り手は、勇敢にも小さな決断を繰り返しています。そして、組織と違って、その結果は自分で引き受けるしかありません。

守るべき家族がある、特に子どもを育てているお母さんは、どうしても保守的になります。現実には冒険は難しいけれど、手仕事の世界では、存分に自己を表現し、アイデアを試して、成功の喜びに浸ることも、失敗して泣く泣く退却することも、できるのです。

刺繍ボールは、まずボール作りから始まります。ぼろ布を割いて、ぐるぐる……球状にまとめていきます。もちろん目指すは完璧な球体。しかしそれが一番難しい。

「中心と同じ距離を保つ」というシンプルな理屈は分かっていても、なかなかうまく作れない。完璧なバランスを求めて、ああでもないこうでもない、といろんな角度から眺めます。人間の世界と同じ、多角的に観察するのが大切です。

でも結局、あちらが出ればこちらが凹み、どうしても歪になってしまいます。いかに私は歪か、ということを見せつけられます。でも、そこがいいんです。宇宙にたった一つの、個性が誕生します。

布をかぶせて、縫い付け、いよいよ毛糸で刺繍をしてきます。基本線に印をつけたら、後はいきなり刺します。型紙はありません。色を選んで、針穴に通して、球を眺めて、「流れ」を見出して、毛糸で表面を埋めていきます。

だいたいの説明はできるけれど、後は個人の内なるセンスにまかせるしかありません。隣の人はどうしているかな、と覗き込みながら、これでいいのかな、と少し不安を抱えながら、でも進むしかありません。自分のアタマの中に浮かんだ絵のように、作るしかないのです。その絵は、自分自身にしか見えないのです。

 描いたビジョンを真に理解しているのは、自分しかいない。

 これはボール作りの手仕事の話ですが、私たちの人生に、とてもよく似ています。

 自分を信じて、ひと針、ひと針。ゆっくりやるから、不器用な人でも大丈夫。違うな、と思ったら、戻ることもできます。進むのか戻るのか、毎回決断です。「違和感を感じたときに戻る勇気」は、まじめな頑張り屋さんに必要な気持ちです。

 毛糸針と毛糸なので、いつでも手を止めることができ、隙間時間でコツコツ、少しずつ進められます。

 積み上げた努力が目に見えて形になって、ゆっくりだけど着実にゴールに近づいていくことを、手仕事は、見せてくれます。成長してるんだか止まっているんだか、分からなくなって、投げ出したくなることも多々ある日々を、励ますかのように。

 

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 完成するまでに一番必要なものは、続けようという意志の力と根気。器用さなんて、実はほとんど関係ありません。やるか、やらないか、ただそれだけです。

行動を繰り返す。手を動かす。それを積み重ねて、晴れて完成に至ったときは、達成感とともに、自分に自信がつきます。やり遂げたという体験は、強烈です。

「作ってみたかった」「作れるとは思わなかった」そのボールが、今、自分の手の中にある。手を動かした人だけが得られるこの感動こそが、ご褒美。冒険の終わりです。おめでとう!

 ひとりでもできるけれど、誰かと一緒に集まって作ると、出来上がりの多様さに驚きます。同じ人間は、一人としていない。それぞれの冒険の軌跡が、作品に表れています。

そういうわけで、小さな子どもと暮らしていて、身動き取れない方には特に、私は手仕事を勧めているのです。料理でも洗濯でも、掃除でも同じことが言えます。

日本でフツーに生きていると、そんなことを見つめる時間なんて、なかなか得られない。子育て期は、大きなチャンスだと思います。